リリース2年で20万人以上の子どもたちが利用。学校体力テストのあらゆる課題を解決する『DOSA SCHOOL』の開発ストーリー
一般社団法人スポーツ能力発見協会(以下、DOSA)は、2022年4月学校体力テスト集計/分析システム『DOSA SCHOOL』をリリースしました。
リリースから2年で熊本市、大阪府などの大都市での導入を実現した『DOSA SCHOOL』は、2014年から実施する「スポーツ能力測定会」(※1)によって得られた約60,000人の体力テストデータおよび生活習慣調査アンケートによる運動能力向上研究のノウハウを組込み、自治体からの声によって生まれました。
学校現場における教職員の業務負担課題から児童生徒の有効的なデータ活用における潜在的な課題までの解決を目指し、DOSAのこれまでの知見を反映したシステムが日本の子どもたちの体力低下の課題をどのように解決するのか。
本ストーリーでは、そのシステムの開発秘話と隠された想いについてお伝えします。
(※1)最新のモーションキャプチャカメラを利用した体力測定と専門家によるフィードバックを行うスポーツイベント。年間約60開催、これまでに日本全国350開催以上を行う。
「5,000個の体力データ数値」をExcelに入力する作業を想像してください
500人の児童生徒がいる学校で身長・体重を含めた体力テストデータ10項目の、合計5,000個のデータを紙からExcelに転記する作業が、今日もどこかの学校の先生によって行われています。子どもが紙に鉛筆で書いた文字ですので、もちろん読みにくい数字も含まれます。児童生徒数が1,000名を超える学校もあり、先生への作業負担が重くのしかかります。
「50万人の体力テストデータ」を1つ1つ確認する作業を想像してください
学校の先生の手で入力されたExcelデータは、各学校から市町村教育委員会を通じて都道府県の教育委員会に送付されます。このExcel等に入力された数値は教育委員会職員によりデータチェックが行われます。エラー値があった場合には、学校に確認し修正を行います。エラー値がないことを確認すると、あらゆるグラフや表を用いて分析作業を行います。そうして完成された体力テスト結果の報告書は数百ページにも及びます。
DOSA SCHOOOL 開発のきっかけは、自治体の声から
DOSA では4歳~高校生までを対象として年間およそ60回もの「スポーツ能力測定会」を開催しています。この事業では専用のカメラ機材(モーションキャプチャ)を用いて独自の6種目の測定を行い、その後1家族ごとに『向いているスポーツ』の提案と運動能力の向上のための運動遊びなどのアドバイスを専門家から行います。開催の9割ほどが自治体からの依頼であり、開催の目的は地域のスポーツ振興、スポーツ実施率の向上、選手タレント発掘事業など多岐にわたります。
数年間連続でのスポーツ能力測定会を開催する自治体もあり、DOSAは自治体の課題をきき子どもと保護者に価値提供ができるように、自治体とのコミュニケーションに大きな重点を置いています。
自治体職員の方々との会話のなかで、たとえばスポーツ能力測定会開催の職員さんからは、「(定員を超えた申込みのため)今回は落選となってしまった方々にも向いているスポーツを知ってほしかった」、
また、別の自治体職員さんからは、「学校の体力テストの記録を使った第一次選考の後に、このスポーツ能力測定会を行えば、選手選考もより効率化されますね。でも学校で実施する体力テストもうまくデータ活用できていない」という会話もありました。
スポーツ能力測定会は、運動・スポーツが苦手、運動・スポーツがあまり好きじゃない子の参加も多いイベントです。イベント予算内で設定した定員を2倍以上も超えて申込みをいただくことも多いですが、泣く泣くご参加いただけないケースもあります。
スポーツ能力測定会の価値をもっと多くの方に提供したい。
学校は体力テストデータをもっとうまく活用できるのでは?
そんな想いや疑問から、
「学校の体力テストの結果から『向いているスポーツ』を提供しよう」
と『DOSA SCHOOOL』の開発を決めることになりました。そのころ、新型コロナウイルス感染症の拡大により、予定されていたスポーツ能力測定会はすべて中止になったことも、開発のスピードを速めることに繋がりました。コロナ期間中は、自分たちに何かできることはないかと模索していた時期でした。
課題の洗い出しから着手。想像していた以上の数の課題を解決する
教育委員会、学校、家庭での学校体力テストに係る課題を洗い出すために、全47都道府県の教育委員会の担当者、何十校もの学校の先生方、児童生徒の保護者の方に学校で行われている体力テストデータの集計方法、費やす時間、出力される結果表、その管理方法までを調査しました。スポーツ能力測定会でも、参加いただいた保護者の方にアンケート調査を行いました。
その調査結果から見えてきたのは、「データ集計」、「データ活用」、「予算」、という3つの課題。学校の授業の中では、副教科といわれる体育、ましてや体力テストという一部の単元に対して、これまでスポットを当てて問題解決に先進的に取り組むことは多くはなかったのかもしれません。
❶忙しい中での測定&PCへの記録の入力
学校では、先生方が忙しい中で準備を進め、数時間の授業時間を使い体力テスト8項目の測定を行います。その測定記録は、先生の手元にある紙の名簿に記録され、Excel等へと転記されるか、子どもたちが手書きで体力テスト集計業者から配布された専用用紙に鉛筆で記入することになります。どちらにしても、クラス内/学年内の記録の入力、子どもたちが正しく記録入力をしているかどうかの確認に先生たちは長時間の集中力を必要として、根気のいる作業となります。
❷先生方によってまとめられたデータの提出
このデータは、それぞれ自治体の方針によって異なりますが、市町村/都道府県/体力テスト集計業者/国等といった何ヵ所へもの提出を必要とします。しかも、データの提出フォーマットはそれぞれ異なることもあります。先生方は、各実施要項の読み込みにも時間をかけ、要望通りにそれぞれの提出フォーマットにまとめ直して提出を行います。
❸データ返却は数ヵ月後であること
業者に委託した学校の児童生徒には、それぞれに結果表が配付されます。しかし、この結果表は体力測定の実施日から2,3ヵ月後に配付されます。年度初めに行った体力テストのことはもう記憶に薄い、実施から数ヵ月後に子どもたちの手元に結果表が届き、得点換算された結果表をその場で見て、特に何も起きずに時間が流れてしまっています。理想は、子どもたちのモチベーションが高い体力テスト直後に瞬時にフィードバックをしてあげることです。スポーツ能力測定会では開催が始まった2014年の当時から、その場で結果表を出力し、モチベーションが高い時にアドバイスを行うことを大事にしています。
❹保護者に届く結果表。見るのは一度だけ
先生から児童生徒経由で返ってくる子どもの結果表はもちろん保護者の手元にも届きます。しかし、スポーツ能力測定会で行った独自の調査によると、「年に1回のみしか記録表を見ない」との回答をした人の割合はおよそ95%でした。結果表が手元に届いたときのみにしか結果表を見ることはないということになります。また、その結果表の保管をされている家庭はおよそ50%で、半分の方は捨ててしまうか、学校へと回収されるために見る機会がないという方でした。
❺教育委員会でのデータ分析に3ヵ月以上かかること
各学校から提出された体力テスト集計の数百もあるファイルは、1校ずつエラー値の修正を行い、教育委員会の職員が1つのファイルに集計をし直します。そのデータ数は50万件を超える自治体もあります。また、外部業者への委託を行う自治体もあります。
このようにして集まったデータは、なかなかうまく活用できません。体育の専門である先生方は、分析結果から授業に活用をすることもできますが、小学校では複数科目の授業をもちたくさんの授業準備もある中で、データの分析結果から授業に活用することは難しく思えます。
これらの集計分析を児童生徒一人当たり200円程で、体力テスト集計業者に委託を行う学校もあります。さらに、市町村/都道府県教育委員会からもまた別の業者へと集計分析を委託をすることもあります。同じデータを分析するのに2度も別々の業者へ委託を行うことがよく行われているということになります。
完成した『DOSA SCHOO』|My遊び機能で子どもたちの運動能力を伸ばす
そんなたくさんの課題を解決することのできる『DOSA SCHOOL』は、2022年4月にリリースされ、熊本市全域での導入が決定しました。集計、分析が自動化されるだけのシステムではありません。運動能力を伸ばし、運動・スポーツを好きになってもらうためのDOSAのノウハウを生かしたシステムです。
GIGAスクール構想で配布された一人一台のタブレット型端末から児童生徒が記録の入力を行い、学校内で集計される時間は大幅に短縮されました。児童生徒が入力後には即座に結果表が出力されて、自分の得意と苦手を把握することができ、楽しく能力を伸ばす“運動遊び”をイラスト等で確認できるようになります。もちろん『向いているスポーツ』も。
子どもたちが入力した記録は全てシステムから出力可能で、先生方はExcelデータでの記録出力を行うことで、教育委員会へのデータ提出も可能。システム上で得点分布や平均値などのグラフや表を見ることができ、グラフは画像ファイルでのダウンロードが可能です。教育委員会画面でも自動的に記録平均値が算出可能で、必要に応じてExcelでのデータ出力ができます。
システムの機能の中には『My遊び』という機能があります。スポーツ能力測定会での60,000人以上の体力測定データとアンケートデータによる運動能力向上研究を行っているDOSAが、子どもたちの運動能力を伸ばすために、運動・スポーツを好きになってもらうために搭載した機能です。私たちは、子どもたちには楽しく遊んで運動能力をのばす“運動遊び”に注目をしており、子どもたちはその“運動遊び”を百以上の中から遊んでみたいものを自分で選択することができるようになっています。
ところが、この『My遊び』を多く使ってもらったのは以外にも先生たちでした。授業前のアイスブレイクや体つくり運動の1つとして先生方にもご活用いただいています。
ちなみに、家庭で保護者と一緒にできる遊びもあります。『DOSA SCHOOL』では保護者の方が子どもの体力の成長をスマートフォンで確認できるようになっていますが、身長の記録や50m走の記録を小学校1年生から中学校、高校まで成長の推移として見ながら、家庭での会話が生まれて、その場でお父さん/お母さんと一緒にちょっとした運動でもしていただけるとうれしいですね。(もっと使ってもらえるように機能開発に取り組みます。)
体力測定が終わったその日から次の体力測定まで、楽しみながら運動能力を伸ばすノウハウ。
スポーツ能力測定会での測定記録と生活習慣アンケートから、運動能力の高い子は普段から運動遊びを楽しんでいる子であり、遊んでいる動きの能力が高くなることが分かりました。
子どもたちにはいろいろな動きを含む遊びをして欲しく、何よりも楽しく遊んでほしいと思っていますが、DOSAではそのために測定種目と場所や人数に合わせた楽しめる遊びを多数用意しており、測定結果に応じて遊びを提案できるようにもなっています。(特許取得済み)
体力測定が終わったその日から次の体力測定まで楽しみながら能力を伸ばすノウハウがDOSAの最大の強みです。
届く喜びの声から生まれたサポート機能について
利用調査のアンケート結果は学校、家庭で実施しています。これまでにたくさんの喜びの声や改善の声をいただいてきました。
ある先生からは、「去年より時間がかからずとても助かりました。子どもに当てられる時間が増えてありがたいです。ありがとうございました。」というお声を、
ある保護者からは、「これは得意・不得意が分かるのでとても参考になります。運動遊びが見れるのが良かった」というコメントをいただきました。
改善や機能追加の声から現在新たな開発も行っています。今後さらに使いやすいシステムに進化していく『DOSA SCHOOL』をぜひ楽しみにしておいてください。
さいごに
集計・管理のみのシステムであれば、誰でもつくれます。DOSAだから教育委員会、学校、家庭目線で、本当に子どもが“遊ぶようになる”体力テストデータ活用の方法を知っています。このシステムを通して、もっと“運動遊び”の良さを子どもたちに知ってもらえるように、私たちは日々ブラッシュアップをしています。
実際の運動遊び指導も学校に伺いますので、教育関係者の方はお気軽に問い合わせください。先生方へのちょっとしたご助言もできると思います。
学校で運動遊び指導!(わくわく先生派遣事業)神奈川県内の子どもの運動習慣形成に『DOSA SCHOOL』が貢献
【本件に関するお問合せ先】
一般社団法人スポーツ能力発見協会 担当:那須
TEL:03-6380-0345
MAIL:info@dosa.or.jp
【DOSA SCHOOLについて】